愛を描く天才・小幡春生 〜その作品と人生〜

作品探訪

7.龍、河童、お化け、鳥獣画ワールド

1)”龍”コケティッシュに

 小幡春生のモチーフは実に多彩である。持てる才能を出し渋ることが無い。おそらく気移りし易い性格なのだろう。その気移りが周囲との関係をトラブル多いものにしていたのではないだろうか。

それはさておきこの龍を見てください。怪異な体、4本の爪で玉を掴む恐ろしい貌、と描きたいところだが、なんだか笑っているようで、もうすでに心はここにあらず、といったコケティッシュな表情だ。
 「春生め、もう何かほかのテーマを考えているな」と勘ぐりたくなるような龍だ。

 本来龍は恐ろしいものではない。悪しきものには恐ろしい罰を与えるが、善男善女には優しく天恵をもたらす神の使いである。春生はその龍の本性を知っていたのだろう。

2)”河童”小ずるそう

 春生は河童もよく描いた。しかし私には、春生は河童が好きではなかったのではないかと思えるのだが、いかがだろう。

 この買い物袋を持つ河童はちょっと小ずるそうな貌をしている。春生の絵にはこういう貌は少ない。河童だけだ。でも、よく描いたということは、嫌いではなかったのかも知れない。

3)”お化け”遊び心で

 春生はなぜお化けなどを描いたのだろう。民話のテーマから拝借しただけなのか。または、ちょっとみんなを驚かしてやろうという遊び心なのだろうか。それとも丸山応挙に対抗しようというツッパリだろうか。今となっては分からない。

4)“鳥獣戯画”手慰みに

 春生は、こんな楽しい絵も描いている。手慰みのように、心の遊びをしている。ここでその作品の芸術性を語ることは止めておこう。ただ、春生という巨大な技術力と繊細で優しい感性を持つ芸術家が、実に幅広い分野に興味を持っていたということを知って欲しいのみだ。